・・・は、イエス・クリストに非礼を行ったために、永久に地上をさまよわなければならない運命を背負わせられた。が、クリストが十字架にかけられた時に、彼を窘めたものは、独りこの猶太人ばかりではない。あるものは、彼に荊棘の冠を頂かせた。あるものは、彼に紫・・・ 芥川竜之介 「さまよえる猶太人」
・・・もし、間違っていたら、ごめんなさい、と大いに非礼を謝して、それでも、やはりその画を、お目に掛けずには、居られなかった。そうして、「十一月二日の夜、六時ごろ、やはり青森県出身の旧友が二人、拙宅へ、来る筈ですから、どうか、その夜は、おいで下さい・・・ 太宰治 「酒ぎらい」
・・・ろぼうに絡みついているわけは、どろぼうは、何も言わず、のこのこ机の傍にやって来て、ひき出しをあけて、中をかき廻し、私の精一ぱいのいやがらせをも、てんで相手にせず、私は、そのどろぼうの牛豚のような黙殺の非礼の態度が、どうにも、いまいましく、口・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・ 柿右衛門の非礼は、ゆるさるべきであろう。藤村の口真似をするならば、「芸術の道は、しかく難い。若き人よ。これを畏れて畏れすぎることはない。」 立派ということに就いて もう、小説以外の文章は、なんにも書くまいと覚悟・・・ 太宰治 「碧眼托鉢」
・・・尤も先生がこれら知名の人の名を挙げたのは、辞任の必ずしも非礼でないという実証を余に紹介されたまでで、これら知名の人を余に比較するためでなかったのは無論である。 先生いう、――われらが流俗以上に傑出しようと力めるのは、人として当然である。・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・投げると申すと失敬に当りますが、粟餅とは認めていないのだから、大した非礼にはなるまいと思います。 この放射作用と前に申した分化作用が合併して我以外のものを、単に我以外のものとしておかないで、これにいろいろな名称を与えて互に区別するように・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
出典:青空文庫