・・・社交的に いかにも顕著な存在ですが、日本の実際には大した足場がありません。そのために、アメリカの目の下で、社交性を裏づける「何か一つ」をやらなければならないという焦燥があるということがわかりました。そのために、いろいろの婦人間の動きもすると・・・ 宮本百合子 「往復帖」
・・・の提唱に、こういうごく素朴な、政治と文学との混同が顕著であることは注目に価する。老藤村が、文化勲章の制定に感激しつつ、いまだ文学が一般の人、特に政治家に分っていないこと、そのためにこのよろこびが些かほがらかならざることに遺憾の心をのべている・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
・・・ 音楽にも民族の性格が顕著なのは自然だが、その自然なものを扱う手法には、種々の不自然さが生じているのが現代社会の一つの悩みであり、課題でもある。この間の「悲愴」の美しさから思いめぐらしても、音楽にある民族的な特性というものを、音楽の外か・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・日本の、肉体で労働する人々、民主的作家をこめて精神で労働している人々が、一つとなって内外のファシズムと戦争に反対して立つ気風が顕著になって来ていることが、その証明である。 さて、こういうように、日本の社会史の上でも画期的な規模と深さとを・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・よほど個性の顕著な人であったのであろう。そうしてこの禅の体得ということも、日本文化の一つの特徴として、今でも世界に向かって披露せられている点である。そうしてみると、これらの三つの点だけでも、応永時代は延喜時代よりも重要だと言わなくてはなるま・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・しかし同時にそれは顕著にインド的なものであって、インドを超えたものではなかった。日本の蓮の花はインドのそれと同じ種類のものであるが、しかしこの種類は現在アジアの温かい地方と北オーストラリアとに限られていて、他の地方にはないと言われている。エ・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
・・・特にこれらの茸と毒茸との区別は顕著に感ぜられた。赤茸のような鮮やかな赤色でもかつて美しさを印象したことはない。それは気味の悪い、嫌悪を催す色であった。スドウシやヌノビキなどは毒茸ではなかったが、何ら人を引きつけるところはなかった。 子供・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
・・・ これは杉苔だけのことであるが、しかし杉苔にこれほど顕著に現われている相違は、他のあらゆる植物にもあるに相違ない。樹の葉の色の相違などは、たぶんそこに起因するものであろう。東山や嵐山などを包んでいる樹木の種類は非常に多いのであるが、そう・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
大地震以後東京に高層建築の殖えて行った速度は、かなり早かったと言ってよい。毎日その進行を傍で見ていた人たちはそれほどにも感じなかったであろうが、地方からまれに上京する者にはそれが顕著に感ぜられた。六、七年前銀座裏で食事をして外へ出たと・・・ 和辻哲郎 「城」
・・・ もちろん著者が顕著に個人主義的傾向を持つことは覆い難い。日本の文化や日本人の特性が批判せられるに当たって最も目につくことは個人の自覚の不足が指摘せられている点である。この不足のゆえに公共生活の訓練が不充分であり、従ってあらゆる都市の経・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
出典:青空文庫