・・・またポーランドのピスチャルカと称するものは六孔の縦吹きのした笛であるが、この品物自身もその名前とともにヒチリキに類するのが不思議である。 南洋のソロモン群島中のある島に存する竹製の縦笛にププホルと称するのがある。長さ五五・四デシメートル・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・ このピタゴラスの話がまるで嘘であるとしても、昔のギリシャかローマに何かそれに類する「禁戒」「タブー」「物忌み」といったようなものがあったのではないかという疑いをおこさせるには十分である。 この頃、柳田国男氏の「一つ目小僧その他」を・・・ 寺田寅彦 「ピタゴラスと豆」
・・・これから想像すると、おそらくその他の類似の問題でも、基礎形式的にこれと類するものがあるであろうと思われるのである。ただこれらの多くの場合はより多く事がらが複雑であって到底簡単な少数有限の方程式などで解決されるべきものではないであろうと予測さ・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・この点においては、最初に挙げた詩と相類するようである。しかし抒情詩のごときものでは個々の作者の感情が強く主張されているのに、ここに挙げたものでは個人を超越した普遍的な能知の意志が活動していると見る事が出来よう。この種の作品の成効せるものでは・・・ 寺田寅彦 「文学の中の科学的要素」
・・・ もっとも、従来行なわれたラジオドラマふうのものの中には、やや前記のモンタージュに類する要素をいくぶんか備えたと思われるものもあるかもしれない。それはその創作者にそういうはっきりした意図はなかったにしろ、自然にそれと同様の効果をねらった・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・お民の態度は法律の心得がなくては出来ないと思われるほど抜目がなく、又其の言うところは全然共産党党員の口吻に類するものがあった。 書肆博文館が僕に対して版権侵害の賠償を要求して来た其翌日である。正午すこし前、お民は髪を耳かくしとやらに結い・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・のみならず、読者に対してはどうかと云うに、これまた相済まぬ訳である……所謂羊頭を掲げて狗肉を売るに類する所業、厳しくいえば詐欺である。 之は甚い進退維谷だ。実際的と理想的との衝突だ。で、そのジレンマを頭で解く事は出来ぬが、併し一方生活上・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・併し文学が児戯に類すると云う話と、今の話は別だよ。ただ批評をして見ると、一寸そんな事を云って見度くなるのだね。 私は、まア、懐疑派だ。第一論理という事が馬鹿々々しい。思想之法則は人間の頭に上る思想を整理するだけで、其が人間の真生活とどれ・・・ 二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
・・・これは、吉村隊の惨虐を筆頭として、それに類する数々の軍国主義教育の荒々しさ、殺戮性への抗議として読者の心にアッピールした。平気でバサリとやる馘首も、惨澹たる生存威嚇であるという事実にまで思い及んで。―― ところが、四月号の『中央公論』に・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・にある「目黒の秋刀魚」に類するものか、と、三十数年前の講演で彼が語った、そのことである。 この質問に対して明快に返答することは、こんにちの学習院の先生にとっても生徒にとっても、おそらく非常に困難なのではあるまいか。「目黒の秋刀魚」と云っ・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
出典:青空文庫