・・・少し変った処といえば、獅子狩だの、虎狩だの、類人猿の色のもめ事などがほとんど毎月の雑誌に表われる……その皆がみんな朝夷島めぐりや、おそれ山の地獄話でもないらしい。 最近も、私を、作者を訪ねて見えた、学校を出たばかりの若い人が、一月ばかり・・・ 泉鏡花 「燈明之巻」
・・・ただそれに対して一つの心配することは、最高水準を下げると同時に最低水準も下がるというのは自然の変異の方則であるから、このユートピアンの努力の結果はつまり人間を次第に類人猿の方向に導くということになるかもしれないということである。 いろい・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・あるいはひょっとしたらわれわれの祖先の類人猿時代のある感覚の記憶でないとも言われないと思ったりした。 鋏の進んで行く先から無数の小さなばったやこおろぎが飛び出した。平和――であるかどうか、それはわからぬが、ともかくも人間の目から見ては単・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・ コフマンは、猿と類人猿の話につづく次の章で変った人種の話の項を展開しているが、私たちはこれらの部分では、おのずからダーウィンの「種の起源」と「人及び動物の表情について」という同じ科学者の感興つきない研究へひきつけられる。さらに今日常識・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
出典:青空文庫