・・・組織と計画の理性の明るさそのものでがっしり組んで来るような颯爽たる大建築の内部には、社会主義労働の全組織網が納っているのだ。 ソヴェト全勤労者の祭日であるメーデーの前日からモスクワ市は一切酒類を売らせなかった。 当日は全市電車がない・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・純真ということを、大人の一生懸命さにひきつけて意味づけたり、無心さを、いじらしさと溶けあわさせたりして、大人の感傷に作家が我知らずこびるとき、子供の世界の最も生粋な陽なたくさくて、心持のいい颯爽さは消えて、そこに子役が登場して来る。 現・・・ 宮本百合子 「子供の世界」
・・・ では、どこに、そういうわれわれの日常生活の意識をかえ、高め、颯爽たる社会的なものにする力があるか? 唯物史観をよんだ現代われわれの棲む資本主義社会の中で自分がどういう階級に属しているかという客観的な立場がハッキリ分って来た。 ・・・ 宮本百合子 「「処女作」より前の処女作」
・・・ ○新恋愛探訪 颯爽として生活力的な恋愛一つもなし。 三つの記事 各々に対する記者の態度が反射して居て面白い。人に対して一人のフェルシンニッツア、体温計、その中に一本いつも三度低いのをもってかけ廻る。 ニャーニカは大体親切だ・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・書斎の鴎外ではなくて、おそらくは軍医総監としての鴎外が、襟の高い軍服をきっちりつけた胸をはり、マントウの肩を片方はずした欧州貴族風の颯爽さで彫られている。立派な鴎外には相異なく眺められた。けれども、私はやっぱりそういう堂々さの面でだけ不動化・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・として転向の風に颯爽と反抗するプロレタリア作家の見えないことを痛憤している。階級的立場のはっきりした人物は、今日、加藤勘十が見得を切っているような風にはふるまえない。そういう情勢であるからこそ、いわばかつて個人的な作家的自負で立っていた時代・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・横光利一氏など、義理人情至上性を昨今強調されるようであるが、日本固有の人情というものの中には、そういう意気地という、些かは颯爽たる分子もなくはないのである。「さび」というものが、日本芸術の一つの大きい価値とされて来ているということに対し・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・作家よ、そして、作家たらんとする人々よ、文壇を蹴って、颯爽と大衆の海へ抜手を切れ、と呼ぶことは、おのずからそこに風の吹きわたるような空気の動きを予想させるのである。 ところで、一般に今日そういう気運が醸し出されているとして、そう云いそれ・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・ 明治の開化期の先進部分の人々には女も男と等しく智慧を明るく、弁説も爽かに、肉体も強く、一人の社会人として美しくたのもしく育ち上らなければならないという颯爽たる理想が抱かれていた。けれども、女学校令の中では、その悠々としてつよい展望は惨・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・当時佐野博士はまだ若々しい颯爽とした新進建築学者であったし、木下杢太郎君はもっと若い青年であった。また伊東博士の雲岡の報告も、フランスのシャヴァンヌのそれとともに、雲岡についての知識の権威であった。ところで、その時に見せてもらった雲岡の写真・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫