・・・聴く所によると、彼はシナリオ料や脚本料など相当な高額を要求し、払いがおくれると矢のような催促をするそうである。おまけにそんな仕事の使いに来る人にも平気でおごらせたりしているらしい。だから、人々は辻は汚ない、けちけちと溜めている、もう十万円も・・・ 織田作之助 「鬼」
・・・月末になると、近所の蕎麦屋、寿司屋、小料理屋などから、かなり高額の勘定書がとどけられた。一家の空気は険悪になるばかりであった。このままでこの家庭が、平静に帰するわけはなかった。何か事件が、起らざるを得なくなっていた。 真夏に、東京郊外の・・・ 太宰治 「花火」
・・・一定以上の高額税は、四ヵ年支払延期の許可がある。毎日の暮しを見ていれば、僅か三ヵ月でさえ経済事情は大変化しているのに、これから先四ヵ年の日本が同じ経済事情でのろのろと這って行くものと、誰が思おう。四年間の猶予ということは、取りも直さず、ずる・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫