・・・その偉力の美しさ、無限の鼓舞がそこにある。世代から世代へ渡る橋桁は人間の心のその光で目釘をうたれ鏤められていることを彼等は遂に見失わなかったのだ。 宮本百合子 「彼等は絶望しなかった」
・・・康な同情、人間より意志を理解しようとする良心の極少量さえも熱烈に要求しているのですから、私たちは野上さんが、若い時代の近側にあることで常に自身の芸術を生気あらしめると同時に、若い時代をその芸術によって鼓舞し、洞察力に刺戟を与えられることを切・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・種々な事を云っても、何をしても、結局、皆が真個に愛し合って、お互に鼓舞して、段々よりよい生活に入って行くことを望んで居るのじゃあ、ありませんこと? 其は私は若いから間抜けな事は沢山するでしょう。けれども、私の持って居るそう云う希望は、間・・・ 宮本百合子 「結婚問題に就て考慮する迄」
・・・ ひとりでいる時の気持が、たっぷりと豊富でなければ、自分の周囲に生活の暖さや、鼓舞や希望を与え得るものではありません。自分が生き、ひとを生かすために、女はますます多くの困難にうちかって行かなければならない時勢です。だから、明るい生活力を・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・ *心が沈み 希望が色あせた時よき友、お前はその点々の線からサファイヤのような耀きを燦めかせて私の心を 鼓舞して呉れ。お前の裡には慕しい我北国の田園も日に戦ぐユーカリの葉もある。野に還し、・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・いろいろな本で、講演で、未来のプロレタリア文化の建設者を送り出す土台として、全学齢児童就学を支持し、鼓舞している。 ソヴェト同盟の労働者、農民は社会主義生産を高めることによって、自身の文化を驚異的に高めつつある。ところが、階級が文化的に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・その工場でウダールニクはどんな階級闘争の歴史をもって組織され、成員はどんな連中であるかを知らないで、そこの労働者クラブを飾る壁画、見るものを鼓舞するような絵は描けない。 芸術家と勤労者とは手にもっている道具の違うことについて新しい自覚を・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 大会が持たれたという事は、しかし何とも云えぬ鼓舞であった。自分が書く筈で書き終えなかった婦人委員会の報告も、して見れば、誰かによってちゃんと書かれているのだ。そう思い、凜としたよろこびに満たされた。外では皆結束して働き、自分の部署は、・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・的実践が階級全体の闘争との生々しい連関においてもっともっと隈なく描かれるように、婦人のプロレタリア・農民作家がドシドシ文学サークル員・通信員の中から養成されるように、日本プロレタリア作家同盟の全活動を鼓舞するため、婦人委員会というものが設け・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・後者は自己を鼓舞し激励するとともに、多くの悩み疲れた同胞を鼓舞し激励します。 あなたに愚痴をこぼしたあとでこんな事をいうのは少しおかしいかも知れません。しかし私はあなたに愚痴をこぼしている内に自然こういう事を言いたい気持ちになって来たの・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫