・・・芸妓の事は固より人外として姑く之を擱き、事柄は別なれども、上流社会に於ても知らずして自から誤るものあり。近来教育の進歩に随て言葉の数も増加し、在昔学者社会に限りて用いたる漢語が今は俗間普通の通語と為りしもの多き中にも、我輩の耳障なるは子宮の・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・右の如く、人の自由独立は大切なるものにて、この一義を誤るときは、徳も脩むべからず、智も開くべからず、家も治らず、国も立たず、天下の独立も望むべからず。一身独立して一家独立し、一家独立して一国独立し、一国独立して天下も独立すべし。士農工商、相・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・地位に平均を得せしめんとするの目的を以て論緒を開き、人間道徳の根本は夫婦の間にあり、世間の道徳論者が自愛博愛などとてその得失を論ずる者あれども、本来私徳公徳の区別を知らざるものなれば、脩徳に前後緩急を誤ること多し、私徳は公徳の母にして、その・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・然るに今の世の不学の徒は、汽車に乗りて汽の理をしらず、電信を用いて電気の性質を知らず、はなはだしきは自身の何物たるを知らずして、摂生の法を誤る者あり。なおはなはだしきは、医は意なりと公言して、医術は憶測に出ずるものかと誤まり認め、無稽の漢薬・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・いたずらに虚飾の流行に誘われて世を誤るべきのみ。もとより農民の婦女子、貧家の女子中、稀に有為の俊才を生じ、偶然にも大に社会を益したることなきにあらざれども、こは千百人中の一にして、はなはだ稀有のことなれば、この稀有の僥倖を目的として他の千百・・・ 福沢諭吉 「文明教育論」
・・・摂理なる観念は敢てキリスト教に限らずこれ一般宗教通有のものでありますがその解釈を誤ること我が神学博士のごときもの孰れの宗教に於ても又実に多々あるのであります。今一度博士の所説を繰り返すならば私は筆記して置きましたが、読んで見ます、その中の出・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・そして、二〇%の改善と推測しているのだが、この推測は推測というものが誤ることのあるとおり誤っている。「生活が苦しいのは収入が足りないからであるというが」「われわれが苦しいと思うのはほしいものを買えないことである」「国民全体としてみれば、・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
出典:青空文庫