・・・社会の形成の変遷につれ次第に財産とともにそれを相続する家系を重んじはじめた男が、社会と家庭とを支配するものとしての立場から、その便宜と利害とから、女というものを見て、そこに求めるものを基本として女らしさの観念をまとめて来たのであった。それ故・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・よこずわりの娘たちは某作家から、あなたがたは第一線の花形です、とたたえられている。せめて毒のない花になってほしい、とはげまされている。それに答える娘たちの物語は、片仮名を二つかさねた名でよばれるこれらの娘たちの生活が、どんな現実をもっている・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・昨年このようにあずけられる子供の数が増えて殺された率も多かったということと、私達は政府が十一月には国民家計が三百円黒字になるといわれたことを深刻に思いあわせます。丸公が値上げになったために一般家計が窮迫しはじめたのも昨年中のことです。 ・・・ 宮本百合子 「“生れた権利”をうばうな」
・・・上下が出版されたし、岩波新書に「家計の数学」同じ著者の「日本の数学」、また吉田洋一氏の親しみぶかく数学の原理を語っている「零の発見」などがあるけれど、物理の物語は岩波文庫にファラディーの「蝋燭の科学」のほかフランスの数学者物理学者天文学者で・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・先日の新聞には、月給百五十円の人の家計は昨今五十円ずつ足を出して、それは赤字となっていることが報告されていた。私たちはみんな自分の実際でそのことは知っている。だから、それさえも半額ときくと、無関心でないのだと思う。 段々民間にもその方法・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
・・・それからマリヤの夜の時間は家計簿の記入と中等教員選抜試験準備のためにつかわれて、朝の二時三時まで二つしか椅子のないキュリー夫婦の書斎での活動はつづきます。 一八九七年、マリヤは長女のイレーヌを生み、彼女の家庭生活と科学者としての生活は一・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・ 自分たちは直接海へのり出して行かないで、その結果だけ待っていて家計をやりくってゆく漁村の女の暮しが楽でないことは、大正八年に米の価が途方もなくあがったとき第一番にそれに反対したのが富山県の漁夫のおかみさん達であったことからも判断出来る・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・とどんな実際関係にいるかという、花形一つの身にあつまっている矛盾、分裂の諸関係を彼のためにも、読者のためにも客観的に整理して示さなければならないのではなかろうか。 だが、「誰のアミが現代のアクタモクタをホントにしゃくいあげることができる・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・国民所得を戦前の百倍として、税は百二十六倍払わなければならず、経済安定本部の数字によれば、それでも去年十一月には、国民の家計は黒字になるはずだったそうです。黒字どころか、おしつまる年の瀬とともに、金のあるふところ、金のないふところの差別はま・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・あらゆる形で大衆課税がとりたてられ、たとえ所得税の税率がいくらか引き下げられたとしても、汽車賃の二倍半までの増額、公定価格の七割ほどの引上げ、通信料の四倍、煙草の二割から八割の値上げは、あらゆる家計を破綻させている。とくに本年度の悪質大衆課・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
出典:青空文庫