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・・・彼は物的価値以外を知らないためにすべてをこの価値によって律しようとし、最も厳粛な生の問題をさえもそういう心情の方へ押しつけて行きました。そういう罪過はいろいろな形で彼に報いに来ました。がしかし、彼はその苦悩の真の原因を悟る事ができないのでし・・・
和辻哲郎
「ある思想家の手紙」
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・・・ 大業にし過ぎるということは若い者にあり勝ちの欠点かも知れない。重大事を重大事として扱うのに不思議はないと思うから。しかし引きしめて控え目に、ただ核実のみを絞り出す事は、嘘を書かないための必須な条件であった。製作者自身は真実を書いている・・・
和辻哲郎
「生きること作ること」