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・・・この……県に成上の豪族、色好みの男爵で、面構も風采も巨頭公によう似たのが、劇興行のはじめから他に手を貸さないで紫玉を贔屓した、既に昨夜もある処で一所になる約束があった。その間の時間を、紫玉は微行したのである。が、思いも掛けない出来事のために・・・
泉鏡花
「伯爵の釵」
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・・・軍閥の巨頭袁を、立憲共和の新しい中華民国の大総統に推さざるを得なかったことが、最大の過誤であったという意味のことを孫文が述べているそうだ。中国だけにある悲劇だろうか。日本の一九四五年八月十五日以後に、東久邇の内閣があった、あり得たということ・・・
宮本百合子
「兄と弟」