・・・では、素朴な古代人の感情、行動、近東の絵画的風俗などに少なからず作者の感興がよせられている。エクゾチシズムが濃い。しかしテーマは、古代ペルシアの王と諸公の運命を支配していた封建的な関係。同じ社会的な条件で、その愛も全うされなかった男女、その・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・で作者は、古代の近東の封建的な武人生活の悲劇を描こうとしている。人間らしい父と子の情愛の表現にさえ、彼等は生活のしきたりから殺伐な方法をとるしかなく、しかも、その殺伐さをとおして流露しようとする人間らしい父と子の心情を、彼等の支配者が利己と・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 近東の少数民族の大衆は、灼けつく太陽の熱や半年もつづく長い冬の中で原始的な手工業、地方病と、封建的地主、親方の二重の搾取の下で、極めておくれた文化をもっていた。 自国語で読み書きすること、著作すること、芝居することまでを禁止され、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 例えば、女性の政治的権利の要求、社会生活の上の機会均等などの要求も、一人の人の発育の過程によって、其態度が違って来る。一人の或る女――それは娘時代には昔風の母親に生活させられた、然し時代が真の女性の本分を要求したのに刺戟されて、初めて・・・ 宮本百合子 「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」
・・・けれども目の下の旧市街は低い近東風の平屋根の波つづきで、平屋根の上には大小の壺が置いてあるのなども見えるのである。渋っぽい、うるしのような匂いのする露路へ入ると、ぎっしり並んだ箱の蓋をあけたように種々様々の韃靼人の店があった。ロシア語で「食・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・提供すべき生産力と、提供した生産力に対して受けるものの比例は、理想からいえば、出来るだけ均等なものにしようとしている。 例えば家庭というものは女にどうしても用が多い。洗濯をする、炊事、育児、そういうものをソヴェトでは出来るだけ社会的にし・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・各人の生活の実体は列に立ったとき、最も単一な面で均等されるわけである。列の心理の一面には、俺だろうがどこの誰様だろうが、というところがある。そして、何となしほかのひとのことに口出しをするのが面映ゆくなくなるような心理の傾きは興味ふかく注意を・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
・・・パレスタインに英国軍用機駐屯所を持つことは近東及印度に対していい押えだ。ルッテンベルグ協約で英国はヨルダン水力電気利権を得た。死海協約でおよそ八十億ポンドの塩を英国は死海から儲けるであろう。パレスタインで農業をしていた先住アラビア人は多く土・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫