・・・君が維新の前後、しきりに国事に奔走して政談に熱したるは、その年齢およそ幾歳のころなりしや。この時にあたりて、世間あるいは君の軽躁を悦ばずして、君に忠告すること、今日、君が我々に忠告するが如き者はなかりしや。当時、君はその忠告を甘受したるか。・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・その口に説くところを聞けば主公の安危または外交の利害などいうといえども、その心術の底を叩てこれを極むるときは彼の哲学流の一種にして、人事国事に瘠我慢は無益なりとて、古来日本国の上流社会にもっとも重んずるところの一大主義を曖昧糢糊の間に瞞着し・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
序論 三つの段階 新聞・通信・ラジオ 出版 雑誌 書籍 教育 国字・国語 宗教 科学 文学 映画・演劇 音楽 ・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ 文章のわかりやすさ、無制限に数の多い漢字を整理し、複雑な仮名づかいを単純にして、子供たちの負担を軽くし、日本語の世界化によい条件をつくろうとしている国語国字改良の運動もある。これは、ジェスチュアの多い、勇ましい、そしてわかりやすい文章・・・ 宮本百合子 「今日の文章」
・・・だから 彼は自己と良心そのものとの仲介者として一人のキリスト、新しい人間の新しい告示者、ロシアのキリストを創造したのである。p.278○彼のこの救世主の文書は――暗黒の印象を与える。p.279 笞のようにビザンティンの十字架を手にし・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・小林秀雄氏の評論家的出発点とその存在意義と横光氏のそれとは酷似した運命におかれた。文学の真の発展が阻害されている一時期に生じる作家と読者との黙契的諒解の上に依存して、作者の不分明な思惟や紛糾した表現を、それが不分明であり不鮮明であるため却っ・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・土曜日の夜七時からある一シリング六ペンスのダンスとテニスに関する告示が鉄柵の上のビラに出してある。ここはロンドン市が誇りとする、そしてあらゆる案内書に名の出ている「民衆の宮」なのだ。何か民衆のための実際的な設備がなくてはならぬ筈である。・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫