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・・・一太が懐っこく、「善どん」と声をかけても、「や」と云うぎりであった。真面目くさっていた。そして直ぐぶつぶつ、箕をふいて籾選りを仕つづけた。 それにしても雨降りよりは増しだ。 雨だと一太は納豆売りに出なかった。学校へ行・・・
宮本百合子
「一太と母」
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・・・戯曲においては、同じ足ならしの一幕物若干が成ったのみで、三幕以上の作はいたずらに見放くる山たるにとどまった。哲学においては医者であったために自然科学の統一するところなきに惑い、ハルトマンの無意識哲学に仮りの足場を求めた。おそらくは幼いときに・・・
森鴎外
「なかじきり」