・・・もし投げたる球が走者に中れば死球といいて敵を殺さぬのみならずかえって防者の損になるべしされば走者がこの危険の中に身を投じて唯一の塁壁と頼むべきは第一第二第三の基なり。けだし走者の身体の一部この基(坐蒲団に触れおる間は敵の球たとい身の上に触る・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・すなわち攫者が面と小手(撃剣を着けて直球を攫み投者が正投を学びて今まで九球なりし者を四球に改めたるがごときこれなり。次にその遊技法につきて多少説明する所あるべし。○ベースボールに要するもの はおよそ千坪ばかりの平坦なる地面(芝生なら・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・СССРでは昔からどんな田舎の駅でも列車の着く時間には熱湯を仕度してそれを無料で旅人に支給する習慣だ。だからしばしば見るだろう。汽車が止るとニッケル・やかんやブリキ・やかんや時には湯呑一つ持ってプラットフォームを何処へか駈けてゆく多勢の男を・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・さア、早く、ケーニッヒさん、タクシーを大至急。と娘を押し出してコルベット卿がロンドンを出るのを止めさせにやる。こういう場面で、私たちのまわりの現実にありふれた年寄りは、マア、お前、店だってこんなに流行っているのに今更何も云々とか、もう年ごろ・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・――そういう方にたいしては、こちらでも、至急考慮いたしますが――……」 私たち二人の作家の訪問は、一回きりで、つぎに、保護観察所という、刑務所の出張所のような役所で、内務省の役人との懇談会があった。そのときも、作家の側からは、生活権のこ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ 一九二七年 九九四二千人 一九三三年 一七〇〇〇千人 殆ど倍の千七百万という児童が、ソヴェト同盟では無月謝で、学用品、弁当まで国家の支給で勉強することが出来るのだ! それには教師が殖えなければならぬ。 現・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・出征兵士は欠勤とし軍隊の日給をさし引いた賃銀を支給すること、各駅にオゾン発生器をおくこと、宿直手当、便所設置その他を獲得し、婦人従業員の有給生理休暇要求は拒絶されて女子の賜暇を男子と同じによこせ、事務服の夏二枚冬一枚の支給、その他を貫徹した・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 腹まきはやはり家にあってまだお送りしてなかったので至急送り出しました。私はひどいセキで吸入をしたりキンカンの汁をのんで居ります。 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 長い時間立ったままで働く女、又は椅子にかけたなりで一日中執務しているような女の体には子宮後屈が多く、不姙その他の不幸を女と男との一生にもたらすことは周知の事実である。ソヴェトでは働く婦人の健康の特にこの点を注意して、新しく制定された工・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 教員の生活保証 事変以来、小学教員の不足と、その不足を至急に補うことから生じる質の低下とは心ある者を考えさせていたが、偶小学校教員の万引横領事件が発覚したということである。 これは勿論最も不幸な例外であろ・・・ 宮本百合子 「女性週評」
出典:青空文庫