・・・入営まで職についていれば除隊後新たに就職するまで失業手当を支給される。親が例えば選挙権をもたないでも息子が赤衛兵ならば集団農場に加入を許される。 手風琴を鳴らして赤衛兵が腰かけている窓の下の掘割を、ボートが一艘漕いで来た。ボートの中には・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・重い労働には六時間で牛乳が支給される。後でわかったことであるがドン・バスの炭坑でも、条件のわるい坑内労働はこの六時間交代、牛乳支給が行われているのであった。労働者生活改善費に今年は五十万留を予算してあるとその技師は説明した。「資本主義時・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・四ヵ月目に、二十二歳のターニャ・イワノヴナが髪の毛と食慾と永久に健康な子宮を失って家に帰った時、彼女は更に一つのものを自分が失ったのを知った。彼女の良人はもうタマーラ・イワノヴナの良人ではなかった。マリンスキーの舞踊手でどこか他の強靭な子宮・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・それが体の外へ排出されるとき月経が起り、「子宮」の内壁から出血するのです。 この時期は、婦人にとって大切な時です。足をピチャピチャにぬらして風邪を引いたりしないように! ひどく揺れる自動車にのったり、馬にのったり、水浴びをしたり馴れ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト映画物語」
・・・ そして女中に留守中の小使銭をわたし、来た手紙の至急なのはあっちへ送る様にそうでないのはこれに入れて置いてお呉れとわざわざ小箱を出してやったりした。衣裳戸棚やその他のいらないものへ鍵をかけてそれを帯上げの前の方へ巻きつけながら、「出・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
・・・月々の月給を、適当に支給する丈の資力はあり、全くの必要からでその人の助を期待している家庭では、心こそ同情に燃えながら、半歳の療養を完全に与えることさえ、実際には不可能なことです。 又たとい、如何程経済状態は良好であるにしろ、今日、そう云・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・何かなければよい、と思って居るうちに、翌日、林町から電話郵便が来た。至急、私に来い、と云うのである。 不快な、来るべきものが来たと云うような心持で、夜、自分は林町へ行った。 父が、話があるからと云って、西洋間に呼ばれる。「もう、・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・出産仕度金は月給の半額まで支給され、ソヴェト同盟の労働法は姙娠五ヵ月以上の婦人労働者と、生れて十ヵ月未満の赤坊を抱えた婦人労働者は、殆んど絶対に解雇することは許されない。 こないだまでの世の中とは何という違いだろう! 支配人の顔なんぞ見・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・よしんば衛生材料が多少不足していても四日間でコンスタンチノープルから支給されるのだから、と。その言葉にもかかわらずフロレンスは女の勘で、いろいろな材料と金とをどっさりたずさえて、さて、到着したスクータリーの陸軍病院は、彼女の一行をどういう有・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・出産支度料を月給の半額まで支給する。九ヵ月間牛乳代を貰える。そして、各区の産院は無料だ。 その産院を、現実にこの眼で見学したくてやって来たのだ。「勿論結構です」 奥から看護婦が白い上っぱりをもって来てくれた。チビの自分には長くて・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
出典:青空文庫