・・・ 上っ皮のかすれた様な細い声は低く平らかに赤い小さな唇からすべり出て白い小粒にそろった歯を少し見せて笑う様子は二十を越した人とは思われないほど内気らしかった。 笹原と云う姓は呼ばずに千世子はいつでも 肇さんと呼んだ。 ・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
・・・ そして大変小粒にそろって居た。 京子は「云いたい事も云えないから」と云う様な顔をして、 私ももう帰らなけりゃあ、 本石町の伯父が来て居るんですから。 また上ります、失礼致しました。 千世子の何とも云いもしな・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ 如何うして其那に笑うのだろう、卿等は―― 小粒な雨が、眠った湖面に玻璃玉の点ポツポツを描いても、アッハハハハと卿達は、大きな声で笑うだろう。 暗紅い稲妻が、ブラックマウンテンに燃立っても、水に跳び込む卿等は同じ筏から。・・・ 宮本百合子 「一粒の粟」
出典:青空文庫