・・・しかしこの有機体の細胞であり神経であるところの審査員や出品者が全部入り代らない限りは、変化とは云うものの、むしろ同じものの相の変化であって、よもや本質の変化ではあるまい。それで今私が頭の中に有っている「帝展の心像」を取り出して、それについて・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
・・・不折の如きも近来評判がよいので彼等の妬みを買い既に今度仏国博覧会へ出品する積りの作も審査官の黒田等が仕様もあろうに零点をつけて不合格にしてしまったそうだ。こう云う風であるから真面目に熱心に斯道の研究をしようと云う考えはなく少しく名が出れば肖・・・ 寺田寅彦 「根岸庵を訪う記」
・・・かつて文部省の展覧会の審査員の某氏に会った時、日本の絵画も近頃は大分上手になりましたといったら、その人は文部省の展覧会が出来てから大変好くなりましたと答えた。日本の絵画の年々進歩するのは争うべからざる事実ではあるが、その原因を某氏のように一・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・それが日本の人民の発展に限界を与えようとするものであることは、特別資格審査委員会一つを見ても、悲しいほどその目的があらわである。はじめ、日本の民主化のために発足したいろいろの「委員会」は、四年の間にあわれやへたぐされとなってきている。 ・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
・・・だから今度の選挙も、結果によってはまた議会を解散させるかも知れないし、議員の資格の再審査をするというのも、まだ私共の十分準備されていないすきに乗じて、たくさんの反動的な、つまりわれわれをまた不仕合せなものにしてしまう力がいろいろの形で政党の・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・或る賞のために努力した若い作家は、多くの場合その賞の審査員である諸作家の影響というものに対して、全く自立的な感情を持ち得ないであろうし、又私などはそのことで自身の芸術の素直な発展を阻害されている何人かの人を知っている。 今日の国家経済の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・ ところが、この金襴の帆を順風に孕ませた宝船、文芸懇話会というものの文学に対する性質の矛盾は、この一九三五年七月、文芸懇話会賞が与えられた直後、授賞者決定に当って審査員の投票では島木健作氏が選に入っていたにもかかわらず、公表されない特別・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・エロ・グロ、剣劇の興行政策をこれまで日本で最もいい制作をしていた東宝にもちこんで、近代的な社会感覚をもっている従業員たちを追いはらっている渡辺銕蔵が、教員の資格審査委員の一人であるという事実は、見のがされてはならない。手のこんだ日本の民主化・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・何故なのだろう。審査員の中に、そういう方面の科学者がいないのだろうか。いることはいても、投票のようなことの結果ああいう日本として自慢にならないようなことになるという事情があるのだろうか。科学が科学としての評価に立ち得ないということは文化の悲・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ ソヴェト・ロシア文部省の芸術部がそれを統轄して、演劇の上演目録審査委員会というものがある。そうしてシーズンが来て――秋から翌年春までのそのシーズンに、どこの劇場ではどれだけの上演目録をどういう順序でやって行くということをそこで決定し、・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫