・・・何年間も否定されつづけて来た若き生の、肯定と回復の一つの気の如く、不安なつつみどころのない表現として、自然と自意識の問題を語るとき大多数の人は十九世紀より現世代にこの人間課題がどう進展して来ているかさえ見おとした。こういう人間問題について特・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・ 女の社会生活の進展は非常なものである。事変第三周年を迎える日本で、社会的な活動にしたがっている若い婦人たちの数だけでもおびただしいものである。社会的活動への婦人の進出はめざましいし、その必要の意味も、個人的に社会的に加重されてきている・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・正確に政治的に把握し得さえすれば――社会的矛盾における複雑活溌な相互関係とそれに対して階級として働きかけるプロレタリアートの革命性を具体的にとらえ得さえすれば、作品における主題の積極性、発展性は革命の進展につれて押しすすめられ得る。この意味・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・社会主義社会の建設は、果して成りゆきによってその方針を決定され、進展されているような受動的なものであるであろうか? それは全然反対だ。 ドミトリーは遂に決心した。「よし!」 インガは息をころしたが、ドミトリーは呻いて一つところを・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・かもそれに加えて傷病兵の一群をまもり、さらに惨苦の行動を行っているのにくらべて、アメリカの近代科学性は、航空力によって天と地との間に立体的桶をつくり、立体的機動性をもって敏速に、生命の最小犠牲で戦線を進展させていることを描いている。文章その・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ 然し、結局に於て収穫と成るものは何かと云えば、経験の綜合から起る真理への進展である。そして、その真理は、只真理に憧れる事を知って居る霊のみが為し能う事なのだと云う事を、私共は忘れてはいけない。若し、子を産む事のみが結婚の全的使命であり・・・ 宮本百合子 「黄銅時代の為」
・・・人として、自分の生活内容をあらゆる方面に伸展させて行こうとする願望と一緒に、同じ心の中から、この歩幅を縮めさせ、左顧右眄させて、終に或る処まで、見越をつけさせて仕舞うような何かの動機があるのである。 四 今・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・ 人類の文化の進展は、未来に私共の心も躍るような光明を予想させる。従って、自分は自分等人類の未来と共に、この僅かな一節である自分並に、他の多くの女性、女性の芸術家たらんと努力する人々の未来に就てここでは一言も触れようと思わない。 只・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・――ここで夫人の受けられる悲歎、悲痛な恢復、新らしい生活への進展ということが、私にとって冷々淡々としておられる「ひとごと」ではなくなって来ます。 逝去の報知を手にした時、自分の心に衝上って来た、驚き竦え、考えに沈んだ心持は、恐らく、これ・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・そのためには或る人々にとっては自身の求める対象が存在する可能性をもっている社会環境にまで、自分の生活を押しすすめて行こうとする伸展性がいるかもしれない。社会文化が生じて世紀を閲している今日では客観的な意味で、健全な恋愛のためには不毛地帯と呼・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
出典:青空文庫