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・・・竿は二本継の、普通の上物でしたが、継手の元際がミチリと小さな音がして、そして糸は敢えなく断れてしまいました。魚が来てカカリへ啣え込んだのか、大芥が持って行ったのか、もとより見ぬ物の正体は分りませんが、吉はまた一つ此処で黒星がついて、しかも竿・・・
幸田露伴
「幻談」
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・・・姉は今年十五になり、弟は十三になっているが、女は早くおとなびて、その上物に憑かれたように、聡く賢しくなっているので、厨子王は姉の詞にそむくことが出来ぬのである。 木立ちの所まで降りて、二人は籠と鎌とを落ち葉の上に置いた。姉は守本尊を取り・・・
森鴎外
「山椒大夫」