・・・その女流選手であった英国のージニア・ウルフが、こんどの大戦がはじまってまもなく、生きつづける精神のよりどころを失って、自殺したことは、私たちに深い暗示を与えたのであった。 私たちは、生きることを愛する。働きのうちに歓喜を覚えて生きること・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・千五百万とよばれている人口のうちにこめられていることを自覚して、ファシズムと戦争挑発に反対署名し、全面講和要求に署名したとしても、ジャーナリズムを通して強力にすすめられているエロティシズムの愚民政策の選手であることの矛盾について、はっきり日・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・最近ヒットしたルポルタージュの選手三人の座談会で、著者は、いよいよとなったら身を売っても仕方がない、売るなら高く売ろうと思いましたと語っている。そこまでそういう言葉で語るひとが、宜川のソ同盟兵が人形の体に鉛筆でいたずらがきしたようなことを「・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・と「繊手に爆弾をとりあげては見たものの」投げる対手はないことになって「時津風枝も鳴らさぬ平和主義」の主観的女権尊崇の栄光を讚していられる。 私が感想を刺戟されたのは、この文章で山川菊栄ともある婦人が、問題を個人的な自分を中心としての身辺・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 一九四八年の夏に、前進的な日本の意欲が平和と生活と文化のまもりのために意味ふかい一歩をふみだしつつあるとき、崩壊と虚無の選手であった作家太宰治がその人らしいやりかたで生涯をとじたことは、決して単なる偶然ではなかった。〔一九四八年八月〕・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・けれども、このつつましい、繊手なおよくそれを支える一つの手鏡が何と興味つきない角度から、言葉すくなく、善良な一人のアメリカ婦人の衿あしにみだれかかる幾筋かのおくれ毛を見せてくれているだろう。東と西とが団欒する客間の椅子では語られず、聴かれな・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ 尾世川と藍子とは、最後の鼠色の船が、先ず船首の端から明るみ、帆の裾、中頃ぐらい、段々遂に張った帆の端が真白になってしまう迄、瞳を凝し見守った。「……変だなあ……」 藍子が、眼をしぼしぼさせながら、若々しい驚きを面に現して云った・・・ 宮本百合子 「帆」
出典:青空文庫