・・・という国内戦時代のコムソモールたちの感情、若さから誤謬は犯しながら雄々しく実践でそれを清算する働きぶりなどを歴史的に見た劇を上演している。ハバロフスクへ潜行運動にベザイスが、絵を描いた貨車にのっかって行く。その中途から頼まれてのせてやった娘・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・という国内戦時代の中ブルジョア層を主題にした脚本などは一九二七・八年モスクワ芸術座で上演され、ひどく評判だった。 ブルガーコフはこの他にも「赤紫の島」という脚本を書いた。これは、カーメルヌイ劇場に上演されてなかなか面白いものだった。とこ・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・ 日本の戦時中に育った若い心は強いて無智に置かれた。非現実のヒロイズムで目のくらむような照明を日夜うけつづけて育った。自分としての判断。その人としての考えかた。社会生活におけるそのことの必然を認めることさえ罪悪とした軍部の圧力は、若い精・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・これから実現する戦時利得税、財産税をすりぬけようとして、大小の各財閥が工夫をこらすであろう術策などは、きっとその専門家的欲望の対象となるであろう。 民主的な検事局というならば、あらゆる場合、基本的な人権の劬り、事件関係に対する社会の現実・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・ 広く知られている通りイタリーのアフリカ植民地政策の活溌さはエチオピア問題を見ても明かであり、リビアは最近急速に戦時軍需資源の獲得地となっている。鉄、ニッケル、ジュラルミン等の原鉱を多量に生産することが分ったそのためにイタリーは附近の土・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・ こういう様相が文化とよばれるものだろうか。こんなまとまりのない、二重三重の不均衡でがたぴし、民族の隷属がむき出されているありさまが、わたしたち日本人の文化の本質だというのだろうか。 戦時中の反動で、しきりに教養だの文化だのと求めな・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・婦人部オルグのメーラなどは、まるで公式的に戦時共産時代からの性関係の形を自身うけついで暮している。 インガが、ドミトリーとのことを話し、彼の妻子について彼女が気を重くしていることを云ったら、長椅子の上へ寝ころびながら、メーラは口笛を吹き・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・井上秀子女史が戦時中日本女子大学校長としてどのように熱心に戦争遂行に協力したかは当時の学生たちが、自分たちの経験した過労、栄養不良、勉学不能によって骨の髄まで知りつくしていることだろうと思う。そういう校長を絶対勢力として戴いて、どうして教育・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・鈴木文史朗はついこの間アメリカへ行ってリーダーズ・ダイジェスト本社の立派なことを日本に吹聴したが、彼はアメリカで何を学び、どう語ることを学んで帰ったというのだろう。戦時中彼はヨーロッパ漫遊をしてナチスと兄弟となっていた日本権力の活躍ぶりを視・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・日本において彼の作品の商品価値がちがう。戦時に、軍部がこの画家を利用することにおいての熱心さまでが違ったのである。 アメリカでもヨーロッパでも、真実な文化人、芸術家たちは、文化・芸術の悪質な商業化に対して、いつも戦って来た。科学者たちも・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
出典:青空文庫