・・・先ず彼女は、若々しい希望に満ちた大望から、自分のよしと思う運命の方向に自分を拡大しようと決心して、人生の中に足を踏み入れる。種々雑多な苦痛や喜悦や、恍惚が、彼女の囲りを取囲むだろう。その中に、何か一つの重大な問題に面接しなければならない事に・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・あまりの大望なのでしょうか?神様。 *自分は 始め 天才かと思った。 あわれ あわれ は……。然し、その夢も 醒めた。 有難い。今は、一片の草のようにつつましく、愉しく、熱心に芸術に向って・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・より堅くされた明日の世界建設のための動力である輪の一くさりとなれる日の来ることをどんなに待望しているでしょう。そのためにも、日本の婦人大衆はよく組織され勇敢聰明に保守勢力とたたかい、日本の民主化を決定的に前進させることを自分たちの責任として・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・売るために、所謂名のある女性だけを選び、何か書いて貰ったのは兎も角、そういうこれから何か仕ようという女性、現代の文明、女性の生活の各方面に批評を抱いて、更に一歩進めようとよき大望を抱いているだろう未知の人々の一言が、だが、あの中にどの位あっ・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・昨今婦人代議士のいうことは戦時中村岡花子や山高しげりその他の婦人達が婦人雑誌や地方講演に出歩いて、どうしてもこの戦いを勝たすために、挙国一致して「耐乏生活」をやりとげてくださいと説いてまわったと同じような「耐乏生活」の泣きおとしです。今日彼・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・女性を憐れむばかりではなく、半身である女性とともにこそ男の民主的生活への解放があることを知る男らしさを待望いたします。〔一九四六年九月〕 宮本百合子 「自然に学べ」
・・・の出現を待望するのでなく、文学批評そのものに、新たな、発展的な客観性の確立を求める気分の醸成されていることは、見のがせないことである。その新しい動力となり得る気分を理解し、作品活動の中に正当に導き出して行くことこそ、「現実そのものから現実を・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・そして、自分も大望を抱いて東京へ飛出しは飛出しても、半年位後にはやせてしおしおと帰って来るか、帰るにも帰れない仕儀になったものは諸々方々に就職口をさがしあぐんだ末、故郷の人に会わされない様なみじめな仕事でも、生きるためにしなければならなくな・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・私はバックの現実を観る目の力と幅、深さが益々鍛錬されて、いつかそういう題材を、阿蘭のような女や男の側から描いた作品の出ることを待望する。 日本が中国と地理的には全く近く、過去の文学的伝統の中に、あれ程深く中国文学の影響を受けながら、現代・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・借金をしてまでの大望が娘によって裏切られた落胆についても、母はそれを率直にありのままは話さず、娘の大成のためには金銭をおしまず、堅忍をもって耐える母という風に道徳化して語った。それが又私の心に体の震えるような憎悪を呼び起すのであった。そうい・・・ 宮本百合子 「母」
出典:青空文庫