・・・ 実験室における割れ目の問題が地殻に適用されるとなると、そこには地質学や地震学の方面に多大な応用範囲が見いだされる。これに関してはかえって地質学者の多くが懐疑的であるように見えるが、物理学者の目から見れば、この適用は、もし適当な注意のも・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・故に一方において地殻の歪みを測知し、また一方においては主要なる第二次原因を知悉するを得れば地震の予報は可能なるらしく思わる。この期待は如何なる程度まで実現され得べきか。 地下の歪みの程度を測知する事はある程度までは可能なるべく、また主な・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・これを充分に理解するためには、その子供をしてそういう言辞を言わしむるようになった必然な沿革や環境や与件を知悉しなければならない。それを知らなければ畢竟無理解没分暁の親爺たる事を免れ難いかもしれない。ましてや内部生活の疎隔した他人はなおさらの・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・ それならばペンの目方を指定しその落下の状況を予知するには、単に緯度や高さや温度や気圧を知るのみならず全宇宙の現状を知悉する事が必要であろうか。力学物理学の教科書を繙いてみると極めて簡単な言葉で重力の方則や落体運動の方則が述べてある。吾・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・なお進て、天文地質の論を聞けば、大空の茫々、日月星辰の運転に定則あるを知るべし。地皮の層々、幾千万年の天工に成りて、その物質の位置に順序の紊れざるを知るべし。歴史を読めば、中津藩もまたただ徳川時代三百藩の一のみ。徳川はただ日本一島の政権を執・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・四月二日 水曜日 晴今日は三年生は地質と土性の実習だった。斉藤先生が先に立って女学校の裏で洪積層と第三紀の泥岩の露出を見てそれからだんだん土性を調べながら小船渡の北上の岸へ行った。河へ出ている広い泥岩の露出で奇体なギ・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・なぜならそこは第三紀と呼ばれる地質時代の終り頃、たしかにたびたび海の渚だったからでした。その証拠には、第一にその泥岩は、東の北上山地のへりから、西の中央分水嶺の麓まで、一枚の板のようになってずうっとひろがっていました。ただその大部分がその上・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
・・・「東京帝国大学校地質学教室行、」と書いた大きな札がつけられました。 そして、みんなは、「よいしょ。よいしょ。」と云いながら包みを、荷馬車へのせました。「さあ、よし、行こう。」 馬はプルルルと鼻を一つ鳴らして、青い青い向うの野・・・ 宮沢賢治 「気のいい火山弾」
・・・(そいじゃ頂(はっは、なあに、こごらのご馳走(地質です。もうからない仕事餅を噛み切って呑み下してまた云った。(化石化石も嘉吉は知っていた。(ええ海百合です。外でもとりました。この岩はまだ上流にも二、三ヶ所学生は何でももう早く餅をげろ呑みにし・・・ 宮沢賢治 「十六日」
・・・この山と地質は同じです。ただ北側なため雑木が少しはよく育ってます。〕いいや駄目だ。おしまいのことを云ったのは結局混雑させただけだ。云わないでおけばよかった。それでもあの崖はほんとうの嫩い緑や、灰いろの芽や、樺の木の青やずいぶん立派だ。佐藤箴・・・ 宮沢賢治 「台川」
出典:青空文庫