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・・・などと記者の渾名を呼んだりし、そのあげく、二次会だと連中とつるんで今里新地へ車を飛ばした。蝶子も客の手前、粋をきかして笑っていたが、泊って来たりすれば、やはり折檻の手はゆるめなかった。近所では蝶子を鬼婆と蔭口たたいた。女給たちには面白い見も・・・
織田作之助
「夫婦善哉」
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・・・縞の美事な尾を振りながら日光のなかでつるんでいる者。しかめつらをして、せわしげにあちこちと散歩している者。 私は彼に囁いた。「ここは、どこだろう。」 彼は慈悲ふかげな眼ざしで答えた。「おれも知らないのだよ。しかし、日本ではな・・・
太宰治
「猿ヶ島」