・・・ 空がよく晴れて十三日の月がその天辺にかかりました。小吉が門を出ようとしてふと足もとを見ますと門の横の田の畔に疫病除けの「源の大将」が立っていました。 それは竹へ半紙を一枚はりつけて大きな顔を書いたものです。 その「源の大将」が・・・ 宮沢賢治 「とっこべとら子」
・・・「きられる鉄片の火花と音楽。さまざまな形で社会主義建設の骨格になり輪となり、起重機となり、鋲となる鉄の美しい力、篤志労働団はその間から叫ぶ。――生産経済プランを百パーセントに! 篤志労働団は叫ぶ。――いや。生産経済プランを一二〇パーセン・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・そこへ、今日は、モスクワでは珍しい日本女まで混えた大群集が六階の天辺のバルコニーまで、チェホフの「桜の園」を観ようとつめかけた。 棧敷の内張も暗紅色、幾百の座席も暗紅色。その上すべての繰形に金が塗ってあるからけばけばしい、重いバルコニー・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ もう一人の男は立ち止ってゴーリキイの頭の天辺から足の先までじろじろと眺め、やり過してから夢中になって云った。「えい! 畜生ゴム靴をはいてやがら!」 一般のゴーリキイに対する熱中が高まるにつれ、その影響をおそれる側からの迫害がは・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫