・・・その時分の島田はソリャアでれでれして尻が腐ってしまうンだからカラ始末に行かなかった」と昔を憶出して塚原老人はカラカラと笑った。この頃の或る新聞に、沼南が流連して馴染の女が病気で臥ている枕頭にイツマデも附添って手厚く看護したという逸事が載って・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・ろくな仕事もしていない癖に、その生活に於いて孤高を装い、卑屈に拗ねて安易に絶望と虚無を口にして、ひたすら魅力ある風格を衒い、ひとを笑わせ自分もでれでれ甘えて恐悦がっているような詩人を、自分は、底知れぬほど軽蔑しています。卑怯であると思う。横・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・三十一にもなって、少しも可愛げが無くなっているのに、それでも、でれでれ甘えて、醜怪の極である。酔いが進むに連れて、ひとりで悲愴がって、この会合全体を否定してみたり、きざに異端を誇示しようと企んだり、或いは思い直して、いやいやここに列席してい・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
出典:青空文庫