・・・は聞き、評者は、或いは作者の話に相槌を打ち、或いは不審を訊この頃、馬鹿教授たちがいやにのこのこ出て来て、例えば、直線上に二点を置き、それが作者と読者だとするならば、教授は、その同一線上の、しかも二点の中間に割り込み、いきなり、イヒヒヒヒであ・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・貴族仲間の禁物は退屈と云うものであるに、ポルジイはこの女と一しょにいて、その退屈を感じたことが、かつてない。ドリスはフランス語を旨く話す。立居振舞は立派な上流の婦人であって、その底には人を馬鹿にした、大胆な行を隠している。ピアノを上手に弾い・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・八、九歳頃の彼はむしろ控え目で、あまり人好きのしない、独りぼっちの仲間外れの観があった。ただその頃から真と正義に対する極端な偏執が目に立った。それで人々は「馬鹿正直」という渾名を彼に与えた。この「馬鹿正直」を徹底させたものが今日の彼の仕事に・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・前者では因果の連鎖が一筋の糸でつづいているが、後者では因果の中間に蓋然の霧がかかっている。それで、前者では練習さえ積めばかなりの程度までは思いのままにあらゆる有様を再現することが出来るが、後者の方では二度と同じ結果を出すまでに何度試みを繰返・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
・・・は多くこの種の映画と同じように甘いと辛いとの中間を行っている。それだけに肩も凝らないがまたどっちもつかずで物足りない気もする。 汽車の中で揺られている俘虜の群の紹介から、その汽車が停車場へ着くまでの音楽と画像との二重奏がなかなくうまく出・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
・・・引っ返すこの男と、あとから出発した直八と、中間を歩いている子供とが途中で会合することを暗示しただけで幕をおろすという暗示的な手法をとった一方で、こんな露骨なお芝居を見せるのは矛盾である。 ついでながら、歩幅と同時に歩調を勘定に入れなけれ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・それはあまりたいした成効とは思われなかったが、しかしともかくも人間のドラマのシーンの中間に天然のドラマの短いシーンをはさんで効果を添えるということは、従来よりももっともっと自由に使用してよいわけである。 これに対する有益なヒントはたとえ・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ ……それで仲間の奴等時々私を揶揄いやがる。息子が死んでも日本が克った方がいいか、日本が負けても、子息が無事でいた方が好いかなんてね。莫迦にしてやがると思って、私も忌々しいからムキになって怒るんだがね。」 悼ましい追憶に生きている爺・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・ いいながら、こんどは三吉を仲間にいれようとする。「君ァどうかね? え、わしがパトロンをめっけてやってもええが」 三吉は早くかえらねばならぬと思っている。専売局の截刻工である深水は、かねてから市会議員などになりたがっていた。しか・・・ 徳永直 「白い道」
・・・大分禿げ上った頭には帽子を冠らず、下駄はいつも鼻緒のゆるんでいないらしいのを突掛けたのは、江戸ッ子特有の嗜みであろう。仲間の職人より先に一人すたすたと千束町の住家へ帰って行く。その様子合から酒も飲まなかったらしい。 この爺さんには娘が二・・・ 永井荷風 「草紅葉」
出典:青空文庫