-
・・・なぜなら、きのうまで、文学青年と呼ばれる人々はいわば彼等作家たちのまわりに集まり動いて作家たちの身辺を飾るそれぞれの花環を構成していたのであるから。その生きた花環の大小が文壇における作家の重みを暗に語るものでなかったとはいえないのである。・・・
宮本百合子
「「大人の文学」論の現実性」
-
・・・枯れた花輪が根のところにあった。いくつもの空の花立はひっくり返って、白い鳩の糞だらけだ。そして三角州の突端、騎馬のウェリントン公爵像は背後に英蘭銀行を、右手に株式取引所の厖大な建物を護り、巡査部長のように雑踏を上から睥睨している。 山の・・・
宮本百合子
「ロンドン一九二九年」