・・・ バードが極飛行から無事に屯営に帰って来たのを皆が狂喜して迎え、機上から人々の肩の上にかつぎ上げて連れてくる。その時バードの愛犬が主人に飛びつこう飛びつこうとするのだが人々にさえぎられて近寄れず不平でむやみに駆け回っているがだれも問題に・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・観客はカメラとなって自由自在に空中を飛行しながら生きた美しい人間で作られたそうして千変万化する万華鏡模様を高空から見おろしたり、あるいは黒びろうどに白銀で縫い箔したような生きたギリシア人形模様を壁面にながめたりする。それが実に呼吸をつく間も・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・トリオの部分は概して水平な短い直線の断片が現われてそれがちょうど編隊飛行の飛行機が風に吹き散らされてでもいるような運動をする。これを見ながら同時にこの曲を聞いているといくらかこの映画作者の気持ちを理解することができるような気がする。 そ・・・ 寺田寅彦 「踊る線条」
・・・そのガソリンは、モーターに超高速度を与えて、自動車を走らせ、飛行機を飛ばせる。太平の夢はこれらのエンジンの騒音に攪乱されてしまったのである。 交通規則や国際間の盟約が履行されている間はまだまだ安心であろうが、そういうものが頼みにならない・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・そのガソリンは、モーターに超高速度を与えて、自動車を走らせ、飛行機を飛ばせる。太平の夢はこれらのエンジンの騒音に攪乱されてしまったのである。 交通規則や国際間の盟約が履行されている間はまだまだ安心であろうが、そういうものが頼みにならない・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・それにはこの鳥の飛行する地上の高さを種々の場合に実測し、また同時に啼音のテンポを実測するのが近道であろう。鳥の大きさが仮定できれば単に仰角と鳥の身長の視角を測るだけで高さがわかるし、ストップ・ウォッチ一つあればだいたいのテンポはわかる。熱心・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・ ツェッペリン飛行船などでも、最初から何度となく苦い失敗を重ねたにかかわらず、当の責任者のツェッペリン伯は決して切腹もしなければ隠居もしなかった。そのおかげでとうとういわゆるツェッペリンが物になったのである。もしも彼がかりにわが日本政府・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・それが夢の中で高知の播磨屋橋を呼び出し、また飛行機の構造か何かが二重層の文化街を暗示したのではないかと思われる。後の場面に現われた土佐の山脈もまたここに縁を引いているかもしれない。「みどりや」という宿屋には覚えがない。しかしやはり前日家・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・ことに飛行隊の活動などは著しく天気の影響を受けている事は日々の新聞記事に徴しても明らかである。 ドイツ側は勿論、聯合軍側でも気象学者がどれだけ活動しているかについては寡聞にして何らの報告にも接しないが、ドイツのごとき国柄では平生から推し・・・ 寺田寅彦 「戦争と気象学」
・・・ その年雪が降り出した或日の晩方から電車の運転手が同盟罷工を企てた事があった。尤わたしは終日外へ出なかったのでその事を知らなかったが、築地の路地裏にそろそろ芸者の車の出入しかける頃、突然唖々子が来訪して、蠣殻町の勤先からやむをえず雪中歩・・・ 永井荷風 「十日の菊」
出典:青空文庫