・・・強制献金のための村の衆の集りに出て、アジ・プロしようという機会そのものの積極的なとらえかたは、間違った方法によって失敗に帰したのだが、僕というプロレタリア作家は、手紙のこの部分になると、階級的先進分子としてオルグ的活動と作家的活動とを、完全・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・初めのうちは皆心配したり、びくついていたが、村じゅうこうなっては却って力がついて、一つかたまって減主義的な方法で耕作するために、随分富農や反動分子との闘争を経て来た。 第一次五ヵ年計画のすんだ今では全農戸の七割が集団農場化し、耕作機械、・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
・・・ こういう工場内の悪質な分子を、労働者出の管理者及び彼を支持する労働者群がどんな困難を経て、克服して行くかといういきさつは、キルションの有名な戯曲「レールは鳴る」にもよく表現されている。 インガ・リーゼルが、知識階級から出た、教育と・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ たださえ集団農場化に反対な富農が女房までソヴェト役員にとられたと勘違いした揚句、村の反革命的分子を煽動して指導者を石で打殺す結果になったとしか思われない。 カターエフの誤謬は階級的闘争を大衆的に表現せず、個人の心理描写で説明しよう・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・木村と往来しているある青年文士は、「どうも先生には現代人の大事な性質が闕けています、それは nervosit です」と云った。しかし木村は格別それを不幸にも感じていないらしい。 夕立のあとはまた小降になって余り涼しくもならない。 十・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・同じく文壇の評ではあるが、これは過去の文壇の評で、しかもその過去の文壇の一分子たりし鴎外漁史の事である。原と主筆が予に文壇の評を求められるのは、予がかつて鴎外の名を以て文学の事を談じたという宿因あるが故だ。ここに書くところは即ち予の懺悔で、・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・新聞紙の伝うる所に依れば、先ず博文館の太陽が中天に君臨して、樗牛が海内文学の柄を把って居る。文士の恒の言に、樗牛は我に問題を与うるものだと云って、嘖々乎として称して已まないらしい。樗牛また矜高自ら持して、我が説く所は美学上の創見なりなどと曰・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・どこか底の方に、ぴりっとした冬の分子が潜んでいて、夕日が沈み掛かって、かっと照るような、悲哀を帯びて爽快な処がある。まあ、年増の美人のようなものだね。こんな日にもぐらもちのようになって、内に引っ込んで、本を読んでいるのは、世界は広いが、先ず・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ そこで文字に書きあらわされてある、あらゆるものの中から、自然主義と社会主義とが捜されるということになった。文士だとか、文芸家だとか云えば、もしや自然主義者ではあるまいか、社会主義者ではあるまいかと、人に顔を覗かれるようになった。 ・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・ 最初は算術の時間で、仮分数を帯分数に直した分子の数を訊かれた時に黙っていると、「そうれ見よ。お前はさっきから窓ばかり眺めていたのだ。」と教師に睨まれた。 二度目の時は習字の時間である。その時の吉の草紙の上には、字が一字も見あた・・・ 横光利一 「笑われた子」
出典:青空文庫