・・・俳句はそのようなものの頭だけが分離し固定したものと言われないこともない。もちろん生物界でそういうふうの進化をしたものはないかもしれないが、そういう仮想的な変遷もやはり一種の進化と見られないことはないであろう。 そういうふうにして一度固定・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・空中電気というとわかったような顔をする人は多いがしかし雨滴の生成分裂によっていかに電気の分離蓄積が起こり、いかにして放電が起こるかは専門家にもまだよくはわからない。今年のグラスゴーの科学者の大会でシンプソンとウィルソンと二人の学者が・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・これに反して漫画家の対象は人間に関係したものであるために、このような分離が困難になり、表現は十人十種になって作者の個性の香が高くなるのは止むを得ない。しかしあらゆる可能な漫画家を一団として見る時には、各画家を微分とした無限項の和としての積分・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
・・・音楽が誘いおこす幻想と周囲の実況とを全く分離せしめ、互に相冒さしめぬように努めることができるようになった。 露西亜オペラの一座はそれより二年を過ぎて大正十年の秋重ねて渡来し、東京に在っては帝国劇場と有楽座とに演奏をつづけた。わたくしが始・・・ 永井荷風 「帝国劇場のオペラ」
・・・実に国のために歎ずるに堪えずとて、福沢先生一篇の論文を立案し、中上川先生これを筆記し、「学問と政治と分離すべし」と題して、連日の『時事新報』社説に登録したるが、大いに学者ならびに政治家の注意を惹き来りて、目下正に世論実際の一問題となれり。よ・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・この目的を達せんとするには、まずこの政教の二者を分離して各独立の地位を保たしめ、たがいに相近づかずして、はるかに相助け、もって一国全体の力を永遠に養うにあるのみ。諸外国にても亜米利加の政治、共和なれども、その教育は必ずしも共和ならず。日耳曼・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・彼の発明の蒸汽船車なり、鉄砲軍器なり、また電信瓦斯なり、働の成跡は大なりといえども、そのはじめは錙朱の理を推究分離して、ついにもって人事に施したる者のみ。その大を見て驚くなかれ、その小を見て等閑に附するなかれ。大小の物、皆偶然に非ざるなり。・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・一八七〇年の普仏戦争と、翌年三月十八日に起ったパリ・コンミューンとその悲劇的な、然し名誉ある結末などは、歴史上有名なバクーニンとマルクスとの対立分離をもたらした。激しい国際情勢の変化と、ますます客観的に現実を洞察するマルクスの理論とは、社会・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・しかしながら、人間精神の本質とその活動についての根本の理解に、昔ながらの理性と感情の分離対立をおいたままで科学という声をきえば、やっぱりそれは暖く躍る感情のままでは触れてゆけない冷厳な世界のように感じられるであろう。そして、その情感にあるお・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・────────────────────────────────── ◎各工場の建物分離。はじからはじまで三十分もかかる。工場のドアをしめきると、各工場分り出来る。ふだん、他職場へゆくこと禁止。・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
出典:青空文庫