・・・ 問。「君はいったい、誰に見せようとして、紅と鉄漿とをつけているのであるか。」 答。「みんな、様ゆえ。おまえゆえ。」 へらへら笑ってすまされる問答ではないのである。殴るのにさえ、手がよごれる。君の中にも!わが神話・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・「は」「わ」と変わればやはり日本語になるからおもしろい。(L.)rideo, (Fr.)rire は少しちがうが「ら」行であるだけはたしかである。「げらげら笑ふ」「へらへら笑ふ」というから g+l や h+l のような組み合わせは全く擬音的・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・ ところが清作は却ってじぶんで口をすてきに大きくして横の方へまげて「へらへらへら清作、へらへらへら、ばばあ。」とどなりつけましたので、柏の木はみんな度ぎもをぬかれてしいんとなってしまいました。画かきはあっはは、あっははとびっこのよう・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
・・・ ある日夫婦のくもは、葉のかげにかくれてお茶をのんでいますと、下の方でへらへらした声で歌うものがあります。「あぁかい手ながのくぅも、 できたむすこは二百疋、 めくそ、はんかけ、蚊のなみだ、 大きいところで稗のつぶ。」・・・ 宮沢賢治 「蜘蛛となめくじと狸」
出典:青空文庫