・・・出した祝儀に、利息を取るよりけちな男だ。君、可愛い女と一所に居る時は、蚤が一つ余計に女にたかっても、ああ、おれの身をかわりに吸え、可哀想だと思うが情だ。涼しい時に虫が鳴いても、かぜを引くなよ、寝冷をするなと念じてやるのが男じゃないか。――自・・・ 泉鏡花 「みさごの鮨」
・・・…… 月々十円ばかしの金が、借金の利息やら老父の飲代やらとして、惣治から送られていたのであった。それを老父は耕吉に横取りされたというわけである。家屋敷まで人手に渡している老父たちの生活は、惨めなものであった。老父は小商いをして小遣いを儲・・・ 葛西善蔵 「贋物」
・・・父としての私が生活の基調を働くことに置いたのはかなり旧いことであること、それはあの山の上へ行って七年も百姓の中に暮らして見たころからであること、金の利息で楽に暮らそうと考えるようなことは到底自分ら親子の願いでないこと、そういう話までも私は二・・・ 島崎藤村 「分配」
・・・芸賞もらった感想文として使って、など苦しいこともあり、これは、あとあとの、笑い話、いまは、切実のこと、わが宿の払い、家人に夏の着物、着換え一枚くらいは、引きだしてやりたく、家賃、それから諸支払い、借銭利息、船橋の家に在る女房どうして居るか、・・・ 太宰治 「創生記」
・・・百年も二百年もの前に貸した金の利息を、そんなハイカラななりをして、毎日ついてあるいてとるということは、けしからん。殊にそれが三十人も続いているというのは実にいけないことだ。おまえたちはあくびをしたりいねむりをしたりしながら毎日を暮して食事の・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・ 人に金貸して、利息でも取り立てる様に書き物を取るなんて…… こっちは、出してもらう身分やないか。 一つ首を横に振られれば、二度と迫られない身やないか。 そんな心掛やから、子も何も出来んのえ。 早くから里子にやられて・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
出典:青空文庫