・・・造船技術はピョートル一世がオランダ人から学んだ。ソヴェト市民の淳朴な感情には、民族的偏見というものがなくて、文明的な先進国として、資本主義国の文化にたいするものめずらしさや、判断を加えることを遠慮する感情があった、最も単純な列として、女のひ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ ○肝癪のいろいろ 十月の百花園 ○部屋をかりに行った中野近くの医者、 パオリ オランダ人。伊太利らしいパオリという名をつけて。よせ芸人一、神田辺の日本下宿一、彼の部屋の雑然さ一、下宿の女中、・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 父、あの調子ではしゃぎ mantelpiece の上のオランダをほめる。 子爵夫人、夫をすすめ、建築の少ない礼の足しにそれをよこし、父、母に叱られる。 常磐木ばかりの庭はつまらない うちの庭は、殆ど常緑樹ば・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
・・・昔のオランダ人なんかは随分、そういう長崎婦人の美点をエンジョウイしたらしいことよ。幕府では、オランダ人が細君を連れて来ることを、政策上許さなかったんですって。或人が折角夫人同伴で来たのに、上陸も許されないで直ぐ其船で追帰されなければならない・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・ 一年半位で帰って来たいと思いますが、行きたいと思うところはスエーデン、ノールウェー、オランダ、フランス、スペインなどですが、然し行かれるところはロシヤとフランスだけでしょう。ロシヤとフランスに一年半位ずついられたら幸福だと思います。向・・・ 宮本百合子 「ロシヤに行く心」
・・・市街は、オランダの陶器絵のように愛らしく美しい。ねっとりした緑の街路樹、急に煉瓦色のこまやかな建物の正面。車道を辷るシトロエンが夢のようなレモン色だ。女の赤い帽子、総ての色調を締める黒の男性散策者。 人は心を何ものかにうばわれたように歩・・・ 宮本百合子 「わが五月」
・・・封建日本の知識人たちは一部の勇敢な人たちだけが、徳川の禁止に脅かされつつオランダ貿易を通じてチラリ、チラリと覗われるようになった近代欧州の知識に関心をよせ、そのためには生命を失いさえしなければならなかった。国内の社会事情の矛盾から、文学上に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・三九年十二月に国際連盟はソヴェト同盟を除名し、ナチス軍はノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギーを侵略した。そして独ソ間の不可侵条約をあざ嗤って、ナチスの大軍がウクライナへとなだれこんだころ、わたしは、しばしばかつてよんだフランス女学生の・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・ 父は所謂蘭医である。オランダ語を教えて遣ろうと云われるので、早くから少しずつ習った。文典と云うものを読む。それに前後編があって、前編は語を説明し、後編は文を説明してある。それを読んでいた時字書を貸して貰った。蘭和対訳の二冊物で、大きい・・・ 森鴎外 「サフラン」
出典:青空文庫