・・・ 君が撫順に来たとき、大きな電気ショベルが、ザクザクと石炭をトロッコにすいこんでいただろう。そして、炭塵で真黒けになった日給三十銭の運搬華工や、ハッパをかける苦力がウヨウヨしていたね。その苦力の番だよ。夜があけると苦力は俺たちの銃剣を見・・・ 黒島伝治 「防備隊」
・・・ 三島から青年団員が大勢乗込んだ。ショベルや鍬を提げた人も交じっている。静岡の復旧工事の応援に出かけるらしい。三等が満員になったので団員の一部は二等客車へどやどや雪崩れ込んだ。この直接行動のおかげで非常時気分がはじめて少しばかり感ぜられ・・・ 寺田寅彦 「静岡地震被害見学記」
・・・二人の子が順番でかわるがわる取るのであったが、年上のほうは虫に手をつけるのをいやがって小さなショベルですくってはジャムの空罐へほうり込んでいた。小さい妹のほうはかえって平気で指でつまんで筆入れの箱の上に並べていた。 庭の楓のはあらかた取・・・ 寺田寅彦 「簔虫と蜘蛛」
出典:青空文庫