・・・ いまこゝでは、資本家等の経営する職業雑誌が、大衆向きというスローガンを掲げることの誤謬であり、また、この時代に追従しなければならぬ作家等が、資本家の意志を迎えて、いつしか真の芸術を忘れるに至ったことを指摘しようと思います。 先ず、・・・ 小川未明 「作家としての問題」
・・・吾々のスローガンはこうでなければならぬ。即ち、ブルジョアジーを打倒し、収奪し、武装解除するために、プロレタリアを武装させること。プロレタリアートは、たゞブルジョアジーを武装解除した後にのみ、その世界史的見地に叛くことなく、あらゆる武器を塵芥・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・には、Xの掲げるスローガンを具体的な主要なテーマとしてたくみに、えん曲に生かしている。こういう問題は、プロレタリア文学において、農民の生活を扱っても、もちろん、どんな困難をおかしても取りあげなければならないものである。小林多喜二の「不在地主・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・なるスローガンは、国内大衆の意識を次の戦争へ集中せしめた。そして、十年して日露戦争が始った。出版物のあらゆるものが圧倒的に戦争に動員された。作家も、文学もまたその例外ではあり得なかった。「戦争文学」「戦争小説」「やまと桜」「討露軍歌かち・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・けれどもそれが、この男に残された唯一の、せめてもの、行為のスローガンになっていたのである。男は、それに依って行為した。男の行為は、その行為の外貌は、けれども多少はなやかであった。われは弱き者の仲間。われは貧しき者の友。やけくその行為は、しば・・・ 太宰治 「花燭」
・・・ 現象を記載するだけが科学の仕事だというスローガンがしばしば勘違いに解釈されて、現象の背後に伏在する機構への探究を阻止しようとすることがあるような気がする。しかし、気をつけないと、自働交換台の豆電燈の瞬きを手帳に記録するだけで満足するよ・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・というものは、実に中国や昔のロシヤとちがうのです。中国も、帝政時代のロシヤも、人民の文化水準は全く低くて、文盲率が非常に高くありました。中国では、日本の侵略に抵抗して、「抗戦救国」というスローガンがあらゆるへんぴな村々の壁にはられました。そ・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ というスローガンを文化科学の全面に押し出しているのである。 イタリーでは今「脱出の文学」ということが云われているそうである。アフリカという土地に於て、そこの新しい条件に立ってモラルも、行動も、世界観も新しい価値を伴って組織し直さるべき・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・ 小説の冒頭には、ワシントン百年祭当日、アメリカの共産党によって指導された民衆の、中国から手をひけ、ソヴェト同盟を守れ、とスローガンをかかげた大衆的示威運動の光景が描かれ、チャーリー中野もそれに参加したと紹介されている。ニューヨークの反・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・という格言を一分も忘れない企業家の利益のために使われていることの人間らしくなさに苦しんで、アメリカの労働者は、はじめてのメーデーに八時間の労働、八時間の休息、八時間の教育というスローガンをかかげたのであった。 労働時間のことは、労働組合・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
出典:青空文庫