・・・ 石炭なしで電力をおこす水力発電所の工事は、日本中、何ヵ所か着手されたまま完成していません。セメントがまわらないためだそうです。国内で使用するセメントの割合は、全生産額のごく少部分です。しかもその少部分のセメントが、どんな風につかわれて・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・グラトコフの「セメント」、フセワロード・イワーノフの「装甲列車」、ファジェーエフの「壊滅」等、みんなこの前後に発表されたものだ。 男の作家たちが、めいめいの傾向に相違はありながら、世界最初の社会主義社会が生んだ文学として、値うち高い成果・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 馬橇が六台つながって、横道へはいってきた。セメント袋をつんでいる。工事場の木戸内へ一台ずつ入れられた。番兵は裾長外套の肩に銃をつっている。 長靴に二月の雪をふみしめ、番兵は右に歩く。左に歩く。しかし歩哨の地点からはとおく去らず、彼・・・ 宮本百合子 「モスクワ印象記」
・・・ 道ばたにセメント樽、曲った古レール、棒材がころがっている。門の内はどうしたのか真暗だ。ここで恐らくは小さい借室第五号への入口を見つけるのは楽でない。日本女は門の方へばっかり気をとられ馬車を降りたら、御者が、 ――またかね?と云・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
出典:青空文庫