・・・あるいはまた艶歌師アルベールが結婚の準備にと買って来た女のスリッパーを取り出す場面と切り換えに、ポーラが自分の室ではき古したスリッパーをカバンにしまっているシーンが現われたり、またアルベールが預かったカバンの係り合いで捕われて行くのとポーラ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・トの下宿における慰めなき荒涼無味の生活の描写があり、おまけにかわいがって飼っていた小鳥の死によって、この人の唯一の情緒生活のきずなの無残に断たれるという場面が一種の伏線となっているので、それでこそ後にポーラの楽屋のかもし出す雰囲気の魅力が生・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・にしろ、ポーラ・ネグリがいかにも女優としての力量を示した「マズルカ」にしろ、実にその多くが、母の悲しい犠牲にたたされていることである。女の生活のそういう悲しみ、諦めの面にふれて来ると、西洋の社会でも日本の社会でも、ちがいは殆んどないように見・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・というのはどんなものだろう。ポーラ・ネグリという女優のあたまのよさは生活力でねりあげ鍛えられていて、つよい印象である。このごろ初恋につれて新しい興味をもたれているデイアナ・ダーヴィン、この女優はその歌にほんとうの濃やかな味わいがないとおりに・・・ 宮本百合子 「映画女優の知性」
出典:青空文庫