・・・そして、日本の文芸にはこの紋切型が多すぎて、日本ほど亜流とマンネリズムが栄える国はないのである。 私はかねがね思うのだが、大阪弁ほど文章に書きにくい言葉はない。たとえば、大阪弁に「そうだ」という言葉がある。これは東京弁の「そうだ!」と同・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・にもそのマンネリズムと、安易さと退屈とはあろう。しかしそれは熱烈なる「愛人教育」によって打破し、指導し得られぬことはない。だがひとたび不幸にしてその女性としての、本質を汚した女性、媚を売る習慣の中に生きた女性を、まだ二十五歳以下の青年学生の・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・なんという、陳腐な、マンネリズムだ。私は、これまで、この言葉を、いったい何百回、何千回、繰りかえしたことであろう。無智な不潔な言葉である。いまの時勢に、くるしいなんて言って、酒をくらって、あっぱれ深刻ぶって、いい気になっている青年が、もし在・・・ 太宰治 「鴎」
・・・三十四歳で死したるかれには、大作家五十歳六十歳のあの傍若無人のマンネリズムの堆積が、無かったので、人は、かれの、ユーゴー、バルザックにも劣らぬ巨匠たる貫禄を見失い、或る勇猛果敢の日本の男は、かれをカナリヤとさえ呼んでいた。 淀野隆三訳、・・・ 太宰治 「碧眼托鉢」
・・・ヨーロッパの大作家は、五十すぎても六十すぎても、ただ量で行く。マンネリズムの堆積である。ソバでもトコロテンでも山盛にしたら、ほんとうに見事だろうと思われる。藤村はヨーロッパ人なのかも知れない。 けれども、感謝のために、私は、あるいは金の・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・現在ではただ与えられたいわゆるスターの生地とマンネリズムとを前提として脚色はあとから生まれるから、スター崇拝者は喜ぶであろうが、できたものは千編一律である。もっともこれは日本の映画に限らない世界的の傾向かもしれないが、自分の不満はこの一般傾・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・というマンネリズムが我まん出来なかったのでね。御心配をかけて御免下さい。 シャツ上下薄手のをお送りします。『破戒』は絶版で古本をさがします。近々シンクレアの『ジャングル』を入れます。 九月十三日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・党の文化問題として批判の発端がとりあげられたということで、他国の知識人の間には三十年来それが一つのマンネリズムになっているとおりソヴェト同盟における芸術の自由その他にたいする反撥が予想されるかもしれない。けれども、毛沢東が中国民衆の人間らし・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・最も当惑することは、ヨーロッパ人が日本を観賞するそういうマンネリズムを、国内的に逆用される場合である。日本のねうちはそこなのだから、と外からの皮相的な日本を見る目を内へあてはめて、利用される場合である。そういう場合は、無邪気で無責任なそして・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・ 聖書 マンネリズム ○上役に対して。 ○パーマのこと。 二月頃 ○西村のこと。 マリモ 本屋、 六月 ミスタ、ミセス ピアス 七日。暑い日 さい 金魚、一匹を大きい二匹で追い廻し・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
出典:青空文庫