・・・現在でのように、どっちかというといつも男対女のいきさつの形で、女の側からの女の幸福の探求がもち出されて来るような社会の時代的な性格に変化が生じて、男も人間の幸福ということを考えれば、女の幸福がその不可欠の条件であることを常識として身につけて・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・ということも、具体的な創作過程にあっては、つまるところ、『現代文学論』の著者の示している如き、作者と作品と、作品がそこからつくり出されて来る現実との三角関係で、作者と作品との関係に対する作者の支配が、不可欠の条件だろう。近頃の活動的と目され・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・言ってみれば芸術の本質はヒューマニズムをその不可欠な一つの足場としていて、それぞれの時代にヒューマニズムというものは歴史の発展の段階をまざまざと反映しつつ推し進んで来ているのである。非人間的な条件に対して人間性の尊貴を主張するこの人間の要求・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・自我が喪失されるとともに純文学は創作の内面的対象としての読者大衆ではなく、外面的な転身の足がかりとして読者を意識し、大衆生活を描くに不可欠な創作方法の探求はぬきに、作者の主観で、自己の作品の購読者としての読者を意識した。そのことで、具体的な・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・新しくて若いアメリカの文化はヨーロッパの文化の富から吸収するべきものを少からずもっているわけだし、ああいう社会生活の習俗では、イギリスの読書人たちのようにフランス語やドイツ語の知識を不可欠に考えてもいないだろうから、特にフランス文学の翻訳な・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
出典:青空文庫