・・・ 一九四七年以後は、総体として日本の民主革命の目標の不明瞭さはそのままで、一方から民主主義文学は即ち労働者・勤労者の経済・政治闘争に利用されるものでなければならないという一面に傾いた見解がつよくおこった。ある種の文化・文学活動家たちがこ・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・村の階級闘争を、パンフョーロフは眠ったく、不明瞭に、ボンヤリ書いてる。シュレンカは、のらくら者の見本だよ。うまく書いてある。あとの貧農の人物を作者は説明していない。富農連が却ってスッカリ書かれてるでねえか。アグニェフがどうやら中農らしいが、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・今日の段階に立って見れば、このスローガンには哲学上の規定をそのままもって来ている点から、創作の実際とぴったりしないところがあって、プロレタリア作家に、むしろ不明瞭で窮屈な感じを与えていた点を指摘しなければならない。こういうような成果と欠陥と・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・という表現も、創作方法の問題としては、あらゆる現実の生きた姿を現実にある儘の錯綜した相互関係で、動いている有様の儘そこに一定の洞察と意思を持って描くという方法と混同された不明瞭さがあった。 未熟であり、よしやある誤りを含んでいたとしても・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ ○永い会話を力のある声でせず、鼻声で不明瞭に一寸「そう、私も出かけましょう」などという位。 不幸な old maid の典型。 八重の心持 ○この人が来たので八重、家のことをちっとも仕ないでよいようにな・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 三鷹事件が、多くの良識ある人にとって不明瞭な性質のものとしてうけとられているからと云って、検事が「でっちあげ」ていいというものだろうか。わたしたち一人一人が、どんなかのゆきがかりで、何かの不明瞭ないざこざに巻きこまれたとき、「でっちあ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 一番思い出さるべき顔の様子までその様に自分のものは不明瞭であるから、これから書いて見様とする種々な時に起った様々な事柄の互の間には何の連絡もなく、理由も時間も明かでない事の方が多い。 また彼の死ぬまでの経歴等と云うものも私は云う積・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・ 吉田海軍大臣の声も、華やかなところはないが、聞きなれて来ると不明瞭ではなかった。 質問に入って、小川郷太郎氏が、経済問題を中心に熱弁を振った。特徴のある声の抑揚のつけかた、区切りかた、いかにも議員らしさの満ちた演説ぶりである。型に・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・ 日本の今日の矛盾が文化面にもたらしているあらゆる矛盾と偽瞞と不明瞭さがとりあげられ調べられるだろう。私たちの実力の乏しさや技術の下手さや智恵の乏しいということもわかるだろう。それだからこそ全国的な規模でこの会議のもたれる値うちがある。・・・ 宮本百合子 「明瞭で誠実な情熱」
・・・寧ろ、生理的にだか伝統によってだか女性全般に共通なあの奇妙な渺茫さ、どこやら急処でもう一息というような生活意識の不明瞭さ、それ等が少くとも原因の一部なのではないのだろうか。〔一九二五年七月〕・・・ 宮本百合子 「わからないこと」
出典:青空文庫