・・・ 結局は、やればやり得る学位を、無用な狐疑や第二義的な些末な考査からやり惜しみをするということが、こういう不祥事やあらゆる依怙沙汰の原因になるのである。たとえ多少の欠点はあるとしても、およそ神様でない人間のした事で欠点のないものは有り得・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・幸いにまもなく正気づきはしたが、とにかくこれがちょうど元旦であったために特に大きな不祥事になってしまったのである。 正月元旦は年に一度だから幸いである。もしこれが一年に三度も四度もあったらたいへんであろうと思われるが、しかしいっそのこと・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・しかし実際ねずみのいない家はまれであり、ねずみがいなくなると何かその家に不祥事が起こる前兆だという迷信があったりするくらいだから、少なくもわれわれ日本人は天井にねずみのいる事を容認しなければならない事になっているかもしれない。それを自分だけ・・・ 寺田寅彦 「ねずみと猫」
・・・家庭の不祥事や、事業の失敗や、時としては当人には何の責任もない災厄までも含まれているようである。 街を歩いている時に通り合せた荷車の圧搾ガス容器が破裂してそのために負傷するといったような災厄が四十二歳前後に特別に多かろうと思われる理由は・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
出典:青空文庫