・・・ 爾迦夷、則ち、両翼を開張し、虔しく頸を垂れて、座を離れ、低く飛揚して、疾翔大力を讃嘆すること三匝にして、徐に座に復し、拝跪して唯願うらく、疾翔大力、疾翔大力、ただ我等が為に、これを説きたまえ。ただ我等が為に、これを説き給えと。 疾・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・ プロレタリア文学の領域でも左右両翼への偏向がプロレタリアートによって正当な批判を受けたのであった。 プロレタリア・リアリズムにむかっての具体的な出直しの試みとして、ソヴェトの文学は大胆に生産の場所からの生のままの報告を、領分の中に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・として、左右両翼の反作用の時を、袖手傍観しないで促進するためにもと、世界人権宣言に改めて深い関心をよせている。 一九四九年の社会政治現象に対してこのような態度を示している中野好夫が、どうして、商業化している文壇的な創作月評座談会などで、・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・更にフェルナンデスは、左右両翼のいずれへ作家が思想的立場を決定することも、歴史と思想の現状になんら照応しない観念、あるいは感じ方の最後的な表現としている。或る種の作家は孤独にあってなし得る時代に対する道徳上の確言があることを強調しているので・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・右両翼への偏向を生む社会的要因である場合、われわれの警戒と努力とは、相互的な関係において常に結ばれている。 顕著な右翼的偏向への危険が目前および自分の作品中にあるとき、それの克服のために努力せず、たまたまそれとの闘いを取り上げた論文が、・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・窓に向き合った壁と、その両翼になっているところとに本箱がある。 久保田はしばらく立って、本の背革の文字を読んでいた。わざと揃えたよりは、偶然集まったと思われる collection である。ロダンは生れつき本好で、少年の時困窮して、Br・・・ 森鴎外 「花子」
出典:青空文庫