・・・もとより、わたし一人の作品が民主主義文学の全部を代表するものではあり得ないし、一人の作家の一定の作品に革命的課題の全部――教育問題から土地革命、中小商工業者、民族資本家の問題まで盛ることも不可能です。今日の要求にこたえるべき階級的文学の多面・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・ 日本では明治維新以来次第に銀行資本と産業資本の結合した独占資本の形は発達したが、生産の格式はおくれた半封建の中小企業を基礎とし、軽工業を基礎とし、植民地賃銀といわれる低賃銀で男女の勤労者を働かして来た。土地の関係も徳川時代と変りない地・・・ 宮本百合子 「三つの民主主義」
・・・フランスが反ファシズム運動としての人民戦線、文化擁護運動を世界に提唱したときから、すべての人民層は、インテリゲンツィア、中小工業者までをふくめて、自身の生存権のためにたたかわなければならなくなった。プロレタリア文学運動が、民主主義文学の運動・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・順次の養子熊喜は実は山野勘左衛門の三男で、合力米二十石を給わり、中小姓を勤め、天保八年に病死した。熊喜の嫡子衛一郎は後四郎右衛門と改名し、玉名郡代を勤め、物頭列にせられた。明治三年に鞠獄大属になって、名を登と改めた。景一の五男八助は三歳の時・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
出典:青空文庫