・・・世界を見わたせば、一つの国が、封建的な性質からより民主化されて来るにつれて、それと歩調を一つにして、婦人の社会生活全面が、変化し、より合理的になって来ている。 世界には、現在のところ、興味ある民主社会の三つの典型が並びあって生活している・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・失業はふえ、生活費は高くなり、生活の安定は社会の全面でくずれかかってきています。 日本の状態は、日本のわたしたちのためばかりでなく、アジアの平和、ひいて世界の平和のために、きわめて警戒されなければならない状態です。日本の中には釈放された・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・つまり、ファシズムに抗議するストライキ、ファシズムに抗議するデモンストレーション、ファシズムに抗議する声明書、それらの集団的な抵抗の裏づけとして本当に一人一人が、自分の生活態度の全面でどんな抗議を行っているか、それを明瞭に意識において見なけ・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・徳田さんの意味する愛情は、女対男の限られた範囲のものではなく、女の生活全面に配られるべき人間らしい思いやり、方策、現実的な援助としての愛情を、日本の婦人は実に貧寒にしか享けていないという意味なのであった。〔一九四六年一月〕・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・一九二九年の十二月、ヨーロッパの諸国からソヴェトへ帰って来たとき、五ヵ年計画の第一年めがはじまっていて、僅か八ヵ月足らずの不在の間に、モスクワ生活そのものが全面的に変化していたことは、作者に震撼的な感銘を与えた。五ヵ年計画はソヴェト人民にと・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・という言葉が用いられはじめて、プロレタリア文学運動の組織が破壊されたのちの日本の文化・文学が見出したものは、全面的な混迷と貧血とであった。「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」は総括的にこの時期を展望している。プロレタリア文学運動の組・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ というスローガンを文化科学の全面に押し出しているのである。 イタリーでは今「脱出の文学」ということが云われているそうである。アフリカという土地に於て、そこの新しい条件に立ってモラルも、行動も、世界観も新しい価値を伴って組織し直さるべき・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・医師ラヴィックの生活をとおして全面に描き出されている旧いヨーロッパの秩序の崩壊に対するやきつくように鋭い意識とその意識につらぬかれつつそれをもちこたえてゆくダイナミックで強靭な感覚と神経。「凱旋門」が日本の若い人々を魅した秘密はそこにあるの・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
今日、日本は全面的な再出発の時機に到達している。軍事的だった日本から文化の国日本へということもいわれ、日本の民主主義は、明治以来、はじめて私たちの日常生活の中に浸透すべき性質のものとしてたち現れてきた。 民主という言葉・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・外で食べる人々についての調査の半面に、家庭にいる主婦の声も統計されて、初めて全面に亙る国民食の課題の参考となるだろう。 国民食の研究資料として、主婦たちの声をとりあつめるのも、隣組の回覧板と一緒に出来ないことでもなかりそうに思える。防犯・・・ 宮本百合子 「「うどんくい」」
出典:青空文庫