・・・ 僕は給仕の退いた後、牛乳を入れない珈琲を飲み、前の小説を仕上げにかかった。凝灰岩を四角に組んだ窓は雪のある庭に向っていた。僕はペンを休める度にぼんやりとこの雪を眺めたりした。雪は莟を持った沈丁花の下に都会の煤煙によごれていた。それは何・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・砂岩や凝灰岩の縞なども、やはりこれらと連関して徹底的に研究さるべき題目であろう。 岩石に関してはまだ皺襞や裂罅の週期性が重要な問題になるが、これはまた岩石に限らず広く一般に固体の変形に関する多種多様な問題と連関して来るのである。 弾・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・〔この山は流紋凝灰岩でできています。石英粗面岩の凝灰岩、大へん地味が悪いのです。赤松とちいさな雑木しか生えていないでしょう。ところがそのへん、麓の緩い傾斜のところには青い立派な闊葉樹が一杯生えているでしょう。あすこは古い沖積扇です。運ば・・・ 宮沢賢治 「台川」
出典:青空文庫