・・・ 上本町七丁目の停留所から、西へ折れる坂道を登り詰めると、生国魂の表門の鳥居がある。 その鳥居をくぐって、神社まで三町の道の両側は、軒並みに露店が並んでいた。 別製アイスクリーム、イチゴ水、レモン水、冷やし飴、冷やしコーヒ、氷西・・・ 織田作之助 「道なき道」
・・・ 下へおりると、おひろが知らしたとみえて、森さんももうやってきて、別製の蓮羊羹なぞをおびただしく届けさせてきた。「先生、これはちょいといいもんです。おひろ一本切ってきてごらん」 道太は二三日前に、芝居のお礼か何か知らんが、辰之助・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・ 本当の別製だ。どうか自分の同胞たちを救けたいとか、親や妻子、良人ばかりは生かせたいとか、奇妙な願いに充ちているので、さながら甘露の味いがする。ヴィンダー こせついていた都会も、これで少しはからりと焼原になったな。脆いものだ。俺が愉快な・・・ 宮本百合子 「対話」
出典:青空文庫