・・・刊行基金として、予約募集の仕事がはじめられた。その頃の金で全額五十円ぐらいであったろうか。予約募集は決して不成功ではなかったにかかわらず、刊行事務はちっとも進行しなかった。一九三三年と云えば、プロレタリア文化運動に集注破壊の向けられた年で、・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・工業化公債募集のビラ。会議の布告。国防飛行協会クラブ主催屋外音楽会の広告ベンチがいくつも壁にそって並んでいる。 赤い布で頭を包んだ婦人郵便配達が、ベンチの上へパンパンに書附類の入った黒鞄をひろげいそがしそうに何か探している。太い脚を黒い・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 経済再建のトップに立つ日本の紡績界の半封建のままの少女労働の搾取に対して、厚生省が、一、女工寄宿舎制度の撤廃、二、遠隔地からの女工員募集禁止、三、女子の就業率引下げと男子労務の増強、四、通勤による工員の確保、などを要望すると語られてい・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・去年行った衆はたいがいもう三十越したったが……、私もこんど募集があったら行こうかと思っているが、どうも――子持ちだからねえ」 ネクタイをずらしたようにかけて、脱いだゴム長は坐席の下にたぐめたまま、此方を向いて紺足袋の片膝抱え、おとなしい・・・ 宮本百合子 「東京へ近づく一時間」
・・・ 町の附近にあるK温泉へ、今までは危い坂道で俥も通れなかったのを、今度その反対の側の森を切り開いて、自動車の楽に通る路をつけようというのである。 募集された人夫の一人となった禰宜様宮田は、先ず森の伐採から着手することになった。白土運・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
シルビア・シドニーが一人二役を見せどころとして主演した「三日姫君」という映画があった。外債募集のためアメリカへやって来た何とかいう世界地図にものっていないような弱小国の麗わしい姫が、ニューヨークへついて間もなくオタフク風に・・・ 宮本百合子 「花のたより」
ブルジュア・ジャーナリズムで行われるいろいろの懸賞募集の選は、いつも必ずブルジュア・ジャーナリズムの利害の見地でやられる。 当選した文章が、だから、いつもその時応募した数百のものの中で一番正鵠を得て書かれているとか、科・・・ 宮本百合子 「反動ジャーナリズムのチェーン・ストア」
・・・ かつて『女人芸術』が、全女性行進曲というものの歌詞を募集したとき、伊豆の大島の小学校の教師をしていた一人の若い女性が、当選した。それが松田解子であった。秋田の鉱山に生い立った彼女は、プロレタリア文学運動の時代、婦人作家として一定の成長・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 結局、こういう原稿の募集のなかでは、最も惨めな条件の畳まりで、社会の底に沈んでゆきつつある母や子の発言はきくことができない。より深い痛ましい今日の問題は、書かれないところで生きて解決をもとめている。そのことを痛切に感じる。 ・・・ 宮本百合子 「「未亡人の手記」選後評」
・・・立派な大学生が、往来で、われわれのブルジョアの尻馬にのり、いい気になって寄附募集のメガホンをふいている。 ブルジョアが経営している劇場東京劇場は早速御用劇「満蒙事件」を上演する。ブルジョア新聞で一つとしてことの真実にふれた報道をしている・・・ 宮本百合子 「「モダン猿蟹合戦」」
出典:青空文庫