岩波新書のなかに、米川正夫氏の翻訳でヴォドピヤーノフというひとの書いた「北極飛行」という本がある。 これは純粋な文学書ではなくて、ソ連の北極探検飛行の記録である。著者も作家ではない操縦士である。彼の指導によって北極の歴・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
・・・ この間ソ同盟の飛行機が北極を通過して一気に一万六百キロ翔んでカリフォルニアのサンジャシント飛行場へ着陸し、六十二時間九分で、北極経由モスクワ・北米間の「スターリン空路」を確立したことがあった。報道映画の世界的傑作の一つとして、シュミッ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・だいぶ北極が近くなっている国ですから、そんなにして遊んで帰って、夜なかを過ぎて寝ようとすると、もう窓が明るくなり掛かっています。」 かれこれするうちに秋になった。「ヨオロッパでは寒さが早く来ますから、こんな秋日和の味は味うことが出来ませ・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・どこかあの辺で、北極探険者アンドレエの骨が曝されている。あそこで地極の夜が人を威している。あそこで大きな白熊がうろつき、ピングィン鳥が尻を据えて坐り、光って漂い歩く氷の宮殿のあたりに、昔話にありそうな海象が群がっている。あそこにまた昔話の磁・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫